厚生労働大臣 田村 憲久 様

「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」に対する共同声明

2014年6月18日

和歌山県精神障害者団体連合会
和歌山県精神保健福祉家族会連合会
和歌山県社会福祉士会
障害者自立支援法訴訟基本合意の完全実現をめざす和歌山の会
和歌山県共同作業所連絡会

 世界で最も精神科病院の平均在院日数が長いなど、遅れを取っている我が国の精神医療はいまなお入院中心と言わざるを得ません。改めて長期社会的入院患者の問題は人権問題として本質を捉えなおし、早急に解決が求められなければなりません。
 これまでも2006年の「退院支援施設」、2012年の「介護精神型老人保健施設」、そして、今回の「病床転換型居住系施設」の提唱はいずれも病院の敷地内での退院であり地域で当たり前に生活を送るものではなく到底認めるわけにはいきません。今日の病床転換問題についてまず私たちがすべきことは当事者の言葉に耳を傾けることです。
 和歌山で精神科病院の長期入院を経て地域生活を果たした2人は次のように証言しています。「精神科の治療とは何か―閉じ込めて、あきらめさせて、意欲を無くさせることか」「退院への意欲を失わず、自分を奮い立たせたのは、入院中から外の作業所へ働きに行き、給料をもらったことである」病気を抱えながらも地域で普通に暮らしたい、働く場を保障してほしい切実な二人の証言は≪精神科治療そのものへの疑い、治療が終わっても、長く入院していることの弊害≫≪全人間的復権(リハビリテーション)は地域の生活の場でこそ行われるべき、そこでこそ回復していける≫という真実が語られています。
 空き病床を埋めるために福祉施設や訓練施設に転換する経営優先の発想ではなく、障害者の人権保障にもとづく施策を実施されるよう以下の諸点を強く求めます。

  1. 障害者権利条約および障害者総合福祉法の 骨格に関する総合福祉部会の提言(以下骨格提言/2011年8月)に照らし合わせて、精神障害者の人権を守り、地域生活の自由の保障をすること
     障害者権利条約は「居住地を選択」でき「どこで誰と生活するかを選択する機会を有」し、「特定の生活施設で生活する義務を負わない」「一般住民向けの地域社会サービス及び施設が、障害者にとって他の者との平等を基礎として利用可能であり、かつ、障害者のニーズに対応していること」を求めている。
    病床転換して院内に居住、もしくは中間施設、訓練施設ができても、それは看護治療する者と患者という関係の続く入院の延長に他ならない。地域生活の自由の保障を奪う重大な人権侵害であることを明確にしなければならない。
  2. 精神障害者の社会的入院の解消は、国策として早急に推進すること
    骨格提言は国が社会的入院、社会的入所を早急に解消するために「地域移行」の促進を指摘している。
    ① すべての障害者は、地域で暮らす権利を有し、障害の程度や状況、支援の量等に   関わらず、地域移行の対象とする。
    ② 社会的入院、社会的入所を早急に解消するために「地域移行」を促進することを
      国が責任を持って行うこと。
    ③ 国は、地域移行プログラムと地域定着支援について重点的な予算配分を行うこと。
  3. 精神科特例を廃止し一般病院と同等の職員配置基準、医療報酬にすること。
    精神科では一般科と比較して医師の数は三分の一、看護師は二分の一でよいとされている精神科特例を直ちに少なくとも一般科と同水準にして一人一人の入院している精神障害者に対して良質な医療がなされるよう病院内の環境整備行う。
  4. 精神障害者の長期社会的入院を生み出さないために、すべての入院患者に対して、入院と同時に退院後の社会的支援を視野に入れた、退院計画を作成し実行すること。
    病院は治療の場であり、治療が終われば、すみやかに退院して福祉が地域で生活を支援する。リハビリテーションは地域生活の場で行う。医療保護入院患者だけでなくすべての入院患者に対して、入院と同時に退院後の社会的支援を視野に入れた、退院計画を作成し実行すること。
  5. 精神障害者の社会的入院を削減し、退院促進するために、不足する地域の社会資源とマンパワーに対してこそ、国が予算措置を行うこと。
    福祉の質を担保するために、それに見合った予算を確保すること。骨格提言では「国は、障害者総合福祉法において、障害者が地域生活を営む上で必要な社会資源を計画的に整備するため本法が実施される時点を起点として、前半期計画と後半期計画からなる「地域基盤整備10ヵ年戦略」(仮称)を策定」せよとした。
    国は、病床転換して「地域生活への移行」を進める愚策をとるべきではなく、改めてここに立ち返って本来の地域生活への移行を推進するよう強く求める。